o3 Guitarsは、スペインのルシアー Alejandro Ramirezが2008年に立ち上げたハンドメイドギター&ベースブランドです。
ヨーロッパの個人製作家のギターが注目される昨今、人間工学に基づいたモダンシェイプをまとったo3 Guitarsは、まさにハイエンドギターの名にふさわしい仕上がりであり、ネックを握った瞬間からその魅力と高いプレイヤビリティを感じ取ることができます。
今回このo3 Guitarsで楽器制作を担当しているAlejandro Ramirez氏にお話をお伺いしました。
インタビュアー(以下、イ))
──本日はよろしくお願いします。
早速ですが、あなたにとって楽器制作を行う上で、最も大事にしている信念はなんですか?
Alejandro Ramirez (以下、A))
ごくごく当たり前のことかもしれないけど、オーダーをしてくれた人にとって、可能な限り弾きやすくて、弾き心地が良くて、繊細で明瞭なサウンドを奏でるギターを正確に作ること。その1点に尽きるかな。そのために、日々制作過程に改良を加えているし、1日1日が勉強だと思っているよ。
イ)
──では、ギター/ベースの制作に於いて、好き嫌い関係なく、特に強くこだわっている部分はありますか?
A)
とてもいい質問だね。ひとりで全ての作業を行なっているので、自然と全ての工程に120%の力を注ぐことになるけど、もし一つだけ挙げるとすればフレットの組み込みだね!この作業をする時には、尋常じゃないくらい神経を尖らせているから、終わった後にはどっと疲れるよ。笑 だから好きかと言われればそうではないけど。笑 でもフレットの打ち込みは、本当に大事な作業のひとつだから、しっかりと時間を費やして、ひとつひとつより丁寧な作業を心がけているよ。結果、今までフレットに関する初期トラブルというのは殆ど無いんだ。
イ)
──分かりました。実はフレットとも関係してきますが、初めてスペインから日本に届いたギターを手にした時、ネックの反りが全くなく、とても理想的な状態のままだったことにとても驚きました。
後、チューニングもほぼそのままでしたね。笑
通常、メーカーによってはギターの弦を緩めて発送し、日本に着いたら多少なりともネックを調整してから販売店へ届けたりしますが、着いてケースを開けた状態≒出荷可能レベルというのは、まさにo3 Guitarsが、1本1本しっかりと組み上げられている証だと感じました。
木材のシーズニング含め、ネックに対する考え方や特別に何か行なっていることがあれば教えていただけますか?
A)
ギターをケースから出して、まず最初にそう感じてくれたのは素直に凄く嬉しいよ!
シーズニングに関しては、僕の工房では加工後の変化を最小限にするために、湿度管理を徹底して行っているし、種類にもよるけど、僕が扱う木材の含水率は平均して6%~7%の間だね。
また、木材のシーズニング中の湿度管理は勿論重要だけど、僕の場合、木材をカットするたびに、木材内の繊維のテンションを和らげる時間を必ず設けているよ。人間で言えば、長時間飛行機の座席に座っていると下半身に疲れが溜まってきて、足を伸ばしたくなるよね?その感覚に近いと思う。木材にもこういう”ストレッチ”のような時間をちゃんととってあげてるんだ。
この工程を繰り返すと、作業時間はどんどん長くなっていってしまうんだけど、加工後に予期しない変化が起こるリスクを最小限に抑えることができるんだ。
だから、「リスクを避ける=作業効率を上げる」ということに繋がっているのかもね。
さらにもう一つ挙げると、ネックの中にはカスタムメイドのカーボンファイバーロッドを使っています。
これは一般的に多くのギターメーカーで使われているロッドとは全く違って、遥かに硬くて特別な仕様になっているよ。細かくは内緒だけど、これが指板のトップからエンドまで最適な角度で仕込まれてる。
長い年月をかけて、ネックの狂いを最小限に抑える方法を探ってきたけど、数年前に自分の中でこの方法を見つけてからは、ほとんど変わっていないかな。
お陰様で、オーダーをいただいたお客さんから、よく同じことを言われるよ。笑
イ)
──本当にネック周りにはこだわりがありますね!
ちなみに、将来的に作ってみたい楽器のアイデアとかはありますか?
A)
もちろん!将来的に作ってみたい楽器のアイデアはたくさんあるよ!実際に作るまでにはもう少し時間がかかると思うけど、今頭の中で描いているのは、セミホロウボディやフルアコのモデルだね。後、アコギにも挑戦してみたいね!最初は趣味として何本が作ってみて、色々勉強することになると思うけどね。笑
イ)
──今後エンドースメントアーテイストを起用してのプロモーションなどは考えていますか?
A)
僕みたいにひとりでやっているブランドは、広告宣伝費に多くのお金を費やすことは難しいんだけど、お陰様でここ数年、o3の名前がSNSや口コミで多くのミュージシャンに知ってもらえてからは、本当に沢山のエンドースメントの問い合わせをもらうようになったよ。
でも残念ながら、僕は特定のアーティストとエンドースをしようとは考えていないんだ。
正直、僕みたいに1人とか、ごく少人数で動いているギターメーカーが、どうやったらアーティストにタダで楽器を提供できるのか不思議でならない。笑
大きなブランドならまだしも、年間数本しか作れないブランドにとっては、本当に考えられないことだ思う。
なにが言いたいかというと、僕は価値を分かってくれて、対価を支払って、楽器を使ってくれる人に対して120%の情熱と技術を注ぎ込みたいんだ。
そこはプレイヤーとしての技術の上手い下手とか、有名無名は関係ないんだ。
ちなみに、マキタ(日本の工具ブランド)は日本のブランドだよね?
イ)
──はい。そうです。
A)
彼らの製品はとても素晴らしいと思うから、僕はマキタの工具を愛用しているけど、マキタのエンドーサーになろうとは思わないし、これからもお金を払ってマキタの工具を購入して愛用するよ。笑
だから、もしo3 Guitarsをステージで弾いているギタリストやベーシストがいたら、彼らは僕から貰ったのではなく、自分でお金を出して購入しているよ。
イ)
──最後に日本のマーケットやユーザーに向けてメッセージをいただけますか?
A)
僕にとって、日本のマーケットにo3 Guitarsが参入することは、とても誇りに思うし、とってもエキサイトしているよ!
もともと日本の文化は僕にとって、とても魅了的に思える点がたくさんあって、凄くリスペクトしているし、僕が個人的にいつか絶対に行ってみたい国のひとつでもあるんだ。
だから、今回作って日本に送ったギターは、o3 Guitarsが日本のユーザーに受け入れられることを心から願いながら作ったんだけど、狙った通り、最高の仕上がりになったよ!是非手に取って弾いてみてください!
イ)
──ありがとうございました!また改めて色々とお話を聞かせてください!
A)
いつでも聞いてね!こちらこそありがとう!